当ブログで約1年前に取り上げたハンデ改善案(記事その1記事その2)について、試行実験を実施した結果を81Dojoのお知らせ欄で発表しました。

  81Dojoお知らせ: ハンデ方式の試行実験のアンケート結果

以前の記事でご提案頂いた「駒得」方式の優位性が確認できました。ご発案いただいたWhiteWizard様に感謝致します。「駒得」方式のメリットを、ざっとまとめると次の通りです。
  1. 駒落ちでよく見られるように、「ハンデが逆に上手を利する」というトリック要素が無い
    • 「互いに角を成り込んでも下手だけ駒が取れない」(香落ち等) → 相変わらず取れないがその駒は既に貰っている
    • 「下手だけ大駒の弱点を突かれて攻められ、上手はその弱点が無い」(二枚落ち等) → 相変わらず弱点を突く対象はもう居ないのだが、その駒は既に貰っている
    • 「(そうやって攻め取られた)大駒を敵陣に打ち込めるのは上手だけ。下手だけ相手用の駒を持たされて負担を強いられ、最後は結局大駒を切って攻める側。取られた駒が一周して返ってくるまで大駒を打てる機会は訪れない」 → 上手が落とした大駒を駒箱に「隠滅」せず、下手がちゃんと貰っていて打てるのでハンデとしてフェア
    • 「上手は自分の大駒のケアが不要なため、自陣を顧みず金銀を盛り上がって抑え込む指し方が可能という特権を持つ」 → 大駒を自陣に打ち込まれてしまうのでその特権が無い
  2. 同じ大きさのハンデを実現するのに、駒落ちよりも上手が失う駒が少なくて済むので、下手にとって見た目の抵抗感が少ない。(「見た目の印象ほど差が付いていない」というトリックが無い)
  3. 平手から「相手の駒を取った」に相当するルール範疇内の変更にとどめ、駒の総数を変化させるという平手の枠組みを破った大変更を避けている (「平手とは別のゲーム」という抵抗感を緩和。下手の心理としてハンデ戦にポジティブに取り組みやすい)
  4. 平手と同じように指す(好きな戦法をいつも通り指す)ことを妨害していない
  5. 「駒を打つ」という狙いを早くから意識できることで、持駒の使い方を学ぶことが出来る
  6. 持駒があるので、八枚落ち等で陥りがちな「敵陣突破までは出来るけど、いつまでたってもそこから上手玉を詰ませられない」という初級者の足踏み(楽しめるようになるまでの無駄でつまらない期間)を解消 → 言わば超初級者向けに有効な練習方法である「裸玉 vs 持駒飛車角」等と同様の要素が備わっている
  7. 純粋に1枚を「駒得」することが、どれだけの差に相当するのかを体感することが出来、駒の損得への意識が高まる
■手合いの比較

さて、「駒得」の手合いはどのように測ればよいのでしょう。こればかりはやってみないと分かりませんが、ひとまず「将棋ソフトの評価値」で測ってみました。
  170108-1
同等のハンデとするのに、上手から奪う駒がいかに少なくて済むかがよく分かります。例えば、
  • 八枚落ちを教わっているレベルの人 → 二枚得(飛車角得)を試して下さい
  • 四枚落ちを教わっているレベルの人 → 飛車得を試して下さい
  • 飛香落ちを教わっているレベルの人 → 香得を試して下さい
なお、ハンデ効果が大きすぎて香得未満の手合いが不足するため、「端歩得」のような手合いを追加してみましたが、上手の香車が直射するため、こればかりは気を付けないと上手を利する要素が少しあるかもしれません。(上手の「突き捨てが先に入っている」だけなので、一歩得を生かす前にそれを仕掛けの一部にされた時点でアドパンテージが皆無となる)

■対局作法

最後に、「駒得の対局の始め方」についても提案してみようと思います。
駒落ちでは、両者が駒を全て並べた後、上手が自分で駒を駒箱にしまい、そのあと初手を指す、下手はそれを待っている、というのがちょっとぎこちない手順だなと思っています。
駒得では、以下のようにして頂ければ如何かと思います。
  1. 両者が駒を全て並べる
  2. そこで、先に「お願いします」の挨拶を済ませる
  3. 下手が上手の駒を取る (これが手続き的には初手みたいなもの)
  4. 上手が次の一手 (実質の初手) を指す
これなら、少し「置き碁」っぽい進行になるのではないでしょうか。
(駒を沢山貰う場合はちょっと面倒なので、最初から駒台において、「お願いします」の後すぐ上手が指すでも良いですね)

初級者指導をしている方や、実力の違う者同士に安定的にイーブンに指してもらいたい立場の方など、もしよろしければ駒得方式を試して頂けたら嬉しいです。