前回記事に、早速多数のフィードバックを頂き有難うございます。当ブログへのコメントの他、Facebook・Twitterなどでもフィードバックを頂き、また様々な代替案が集まりました。
前回ご紹介した「駒持ち」の他、下手側をプラスにしながらも初期配置の保存を重視する「駒成り」(最初から角や飛車が成っている)、さらには上手の駒を落として下手の駒台に置くという駒落ち&駒持ちの合わせ技の大ハンデ(「駒得」)、など有力な改良案を頂きました。
「駒持ち」の一番のデメリットは、下手の初期配置が変わってしまうことです。このため、平手の普段通りの戦法を指すことが出来ず、またどう指せば良いのか分からないという事態に陥る可能性がありました。例えば、居飛車とか振り飛車とか、好きな戦法を指せません。そして、金銀や玉をどう駒組みすれば良いのかが分かりません。
一例として、「二枚持ち」から☖8四歩と指されたら下手はどうするか、という問題が話題となりました。これには☗4五角で馬が出来るので、普通は☖8四歩と指しづらいのですが、下手が初級者ですと☗4五角が打てるとも限りません。すると平手で学んだとおり8六の地点を守ろうとします。ところが実は守る手がありません。☗7六歩から☗7七角と据えているようでは意味が無いし、そもそも☗7六歩など指してしまうと☖3四歩でおかしいです。(角が盤上に居ないことが不利に働いており、また仮に☗8八角打と平手に戻すにも一手損になる。) 二枚落ちの上手のように、飛車先を受けずに全体で守って指すのが正解なのですが、そんなことは初級者にとっては無理な話で、結局平手の延長では指すことが出来ません。誰にでも「楽しんで指してもらいたい」という主旨に対して、大きなデメリットをまだ抱えているわけです。

つまり前回述べた、(2)普段と同じように指せる、(3)確実に有利が担保されている という2つのポイントに関して私は誤っていました。
そこで頂いた代案一つ目が「駒成り」です。初期配置が同じなので、一応平手と同じような感じで指すことは出来そうです。しかし、成駒がある時点で既に異なる序盤です。同じ駒組み・囲いをすることにそもそも意味が無くなってしまうはずなので、学び方を間違ってしう可能性があります。また「飛車を成る」という目的を奪われると、かえって何を目指して指せば良いかという指針を失ってしまい、結局駒持ちと同じく「どう指せば良いのか分からない」ことになるかもしれません。

下手側のプラスのみでハンデを作ろうとすると、どうしても下手の盤面が平手と変わってしまうのが問題でした。(置き碁なら本質が変わらないので良いのですが) そこで、思い切って上手も落として下手も持たせるという「駒得」案を提案頂きました。
駒落ちですら下手のプライドを傷つけ気味で拒否されがちなのに、さらに駒を貰うなんてもっと拒否されそう、、、かと思いきや、意外とそう感じにくいということに気付かされます。多分、将棋を知ったばかりの方に提案するハンデとして、駒を落とそうが渡そうが、提案された側の印象として大差が無いと思われます。むしろ駒落ちの違和感は、ゲームの構成要素である駒を、駒箱に除外して無くしてしまうという変更の過激さが抵抗感を生んでいる側面も多少ありそうです。むしろ「相手に渡す」(平手のルールの範疇で「相手の駒を取った」に相当する)方がゲームの枠組みを変えていない分、すんなり受け入れられる可能性も見えてきます。

各ハンデの得失を少し整理してみましょう。

上手の力を奪わない事に拘るのをやめれば、「駒得」方式はかなり優れているように思います。駒持ちよりこちらが遥かに良いかもしれません。
置き碁では、下手が自分て黒石を置いて、それが終わると白から打つと思います。この手順が平手の延長であまり不自然ではなくて良いと思うんですよね。「駒得」方式の場合も、平手を並べた後、下手が失礼しますと言って自分で上手の駒を取り、その後上手から指せば自然な気がします。駒落ちは、上手が自分で駒箱に駒をしまって、そして指し始めるという、一連のことをやってくれるのを、下手が恐縮して待っているという何とも微妙な感じがあるんですよね。
次に、将棋エンジンによるハンデの大きさの計算です。

駒持ちは駒落ちよりも評価値が小さく見積もられました。下手有利の普遍性は向上したものの、有利の程度の大きさでは小さいということだと思います。実際にそうなのでしょうか。こればかりは実験してみないと分かりませんね。
また「駒得」方式は、もちろん有利の程度が大きすぎる結果となるわけですが、それはつまり「駒を落とす場合より、渡す駒が少なくて済む」ことを意味しますので、むしろ好都合です。結果として、ハンデをもらった時の見た目の印象が、より小さなハンデに見えるので拒否感を減らすことができ、それでいて実はハンデが大きいという効果が得られますね。
いろいろな「実験」ができるのが81Dojoの強みです。皆さんにもアイデアを頂きながら、海外の方や子供に(オフラインで)将棋を勧めていく際に使える良いツールの研究を続けていきたいと思います。
※81Dojoでの実験による検証結果(1年後)へ
前回ご紹介した「駒持ち」の他、下手側をプラスにしながらも初期配置の保存を重視する「駒成り」(最初から角や飛車が成っている)、さらには上手の駒を落として下手の駒台に置くという駒落ち&駒持ちの合わせ技の大ハンデ(「駒得」)、など有力な改良案を頂きました。
「駒持ち」の一番のデメリットは、下手の初期配置が変わってしまうことです。このため、平手の普段通りの戦法を指すことが出来ず、またどう指せば良いのか分からないという事態に陥る可能性がありました。例えば、居飛車とか振り飛車とか、好きな戦法を指せません。そして、金銀や玉をどう駒組みすれば良いのかが分かりません。
一例として、「二枚持ち」から☖8四歩と指されたら下手はどうするか、という問題が話題となりました。これには☗4五角で馬が出来るので、普通は☖8四歩と指しづらいのですが、下手が初級者ですと☗4五角が打てるとも限りません。すると平手で学んだとおり8六の地点を守ろうとします。ところが実は守る手がありません。☗7六歩から☗7七角と据えているようでは意味が無いし、そもそも☗7六歩など指してしまうと☖3四歩でおかしいです。(角が盤上に居ないことが不利に働いており、また仮に☗8八角打と平手に戻すにも一手損になる。) 二枚落ちの上手のように、飛車先を受けずに全体で守って指すのが正解なのですが、そんなことは初級者にとっては無理な話で、結局平手の延長では指すことが出来ません。誰にでも「楽しんで指してもらいたい」という主旨に対して、大きなデメリットをまだ抱えているわけです。

つまり前回述べた、(2)普段と同じように指せる、(3)確実に有利が担保されている という2つのポイントに関して私は誤っていました。
そこで頂いた代案一つ目が「駒成り」です。初期配置が同じなので、一応平手と同じような感じで指すことは出来そうです。しかし、成駒がある時点で既に異なる序盤です。同じ駒組み・囲いをすることにそもそも意味が無くなってしまうはずなので、学び方を間違ってしう可能性があります。また「飛車を成る」という目的を奪われると、かえって何を目指して指せば良いかという指針を失ってしまい、結局駒持ちと同じく「どう指せば良いのか分からない」ことになるかもしれません。

下手側のプラスのみでハンデを作ろうとすると、どうしても下手の盤面が平手と変わってしまうのが問題でした。(置き碁なら本質が変わらないので良いのですが) そこで、思い切って上手も落として下手も持たせるという「駒得」案を提案頂きました。
駒落ちですら下手のプライドを傷つけ気味で拒否されがちなのに、さらに駒を貰うなんてもっと拒否されそう、、、かと思いきや、意外とそう感じにくいということに気付かされます。多分、将棋を知ったばかりの方に提案するハンデとして、駒を落とそうが渡そうが、提案された側の印象として大差が無いと思われます。むしろ駒落ちの違和感は、ゲームの構成要素である駒を、駒箱に除外して無くしてしまうという変更の過激さが抵抗感を生んでいる側面も多少ありそうです。むしろ「相手に渡す」(平手のルールの範疇で「相手の駒を取った」に相当する)方がゲームの枠組みを変えていない分、すんなり受け入れられる可能性も見えてきます。

各ハンデの得失を少し整理してみましょう。

上手の力を奪わない事に拘るのをやめれば、「駒得」方式はかなり優れているように思います。駒持ちよりこちらが遥かに良いかもしれません。
置き碁では、下手が自分て黒石を置いて、それが終わると白から打つと思います。この手順が平手の延長であまり不自然ではなくて良いと思うんですよね。「駒得」方式の場合も、平手を並べた後、下手が失礼しますと言って自分で上手の駒を取り、その後上手から指せば自然な気がします。駒落ちは、上手が自分で駒箱に駒をしまって、そして指し始めるという、一連のことをやってくれるのを、下手が恐縮して待っているという何とも微妙な感じがあるんですよね。
次に、将棋エンジンによるハンデの大きさの計算です。

駒持ちは駒落ちよりも評価値が小さく見積もられました。下手有利の普遍性は向上したものの、有利の程度の大きさでは小さいということだと思います。実際にそうなのでしょうか。こればかりは実験してみないと分かりませんね。
また「駒得」方式は、もちろん有利の程度が大きすぎる結果となるわけですが、それはつまり「駒を落とす場合より、渡す駒が少なくて済む」ことを意味しますので、むしろ好都合です。結果として、ハンデをもらった時の見た目の印象が、より小さなハンデに見えるので拒否感を減らすことができ、それでいて実はハンデが大きいという効果が得られますね。
いろいろな「実験」ができるのが81Dojoの強みです。皆さんにもアイデアを頂きながら、海外の方や子供に(オフラインで)将棋を勧めていく際に使える良いツールの研究を続けていきたいと思います。
※81Dojoでの実験による検証結果(1年後)へ
コメント
コメント一覧 (9)
将棋エンジンによる計算結果が興味深いです。
角持ちの優位性がほとんど評価されていませんけれど、
平手戦で、角交換後、盤上の角と持ち駒の角であれば、
持ち駒の角が、いつでもどこにでも打ち込める分、
有利ですけれど、実際に香得したほうが優位に立てますから、
計算結果の通りですね。
駒の価値から言えば 角 < 銀+香 だと思いますから、
角落よりも、香得が大きく評価されているのが、
少々意外ですが、そうなのかも知れませんね。
早く、駒得機能、体験してみたいです。
開発、よろしくお願いいたします(*^_^*)
将棋のハンデですが、私が初心者の頃は上手の方に駒落ちではなく、王や大駒などを初期位置から動かさない「不動」ルールで指してもらっていました。将棋本などには載っていなかったのでローカルルールだと思いますが。
この方法だと上手の大駒もとることも出来るため、駒落ちよりも楽しみがあります。一方で、このルールになれてしまうと、大駒の利きを軽視してしまいがちになります。
今思えば、上手の方も、不動駒は相手に取られるまでただの邪魔なブロックでしかないため駒落ちの定跡などが使えないなどの不具合もあると思います。
コンピュータ将棋上ではどのようになるのかはわかりませんが、一応ハンデの一種類として。
不動駒は駒台の上にのった後は普通の駒として使えました。
連投すみません。
それで、オフラインで初心者と、うまく手加減できるほど強くはない中級者が対戦する場合の(中級者が心の中で心掛けるべき)ハンデを考えてみたのですが、「まねっこ将棋」、通称マネ将棋というのはいかがでしょう。
▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲2四歩△8六歩の要領で。
実際、駒の動かし方を知っている程度の本物の初心者と対戦するときの指し方の心得のよい目安になると思います。
なお、超初心者には原点に立ち返って駒落ちで、夏目の右腕でもやっていた裸玉、またの名を19枚落ち、ただし都合に応じて「待った」あり、をおすすめします。
先手が2七の歩を落とす太閤将棋について調べてみました。
まず、ソフトの初期局面評価値では、最新のaperyで100億局面以上探索して
先手+1600と出ました。
同様に二枚落ちの初期局面を検討するとやはり下手の+1600となりましたので、
太閤将棋はほぼ二枚落ちと同等の手合いと見ることができます。
加えて太閤将棋の魅力は、
初手2三飛成3手目2八龍5手目2四歩7手目2三歩成を防ぐ手段がないことで、
・初手でいきなり飛車が成れる=目的がはっきりする
・5手目で2四歩を打つ=垂れ歩を学ぶ
・7手目でと金を作る→と金を活用して攻める
ということで、平手でも通用する初歩の手筋を使いながら始めることができる、
というのも魅力的に思えます。
もしくは下手中住まい状態でスタート
もしくは下手は完全に自由に陣形をいじった状態でスタート(歩は動かすの不可ルールもあり)
レート差で100-200位のレベルであり、700-900位レート差が出る飛車落とは本質的に異なるハンディだと思われます。
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